マンションの仕組み(第五十歩)

■花鳥風月 / マンションの工事安全(その1)

マンションの管理組合の一大事業に、修繕委員会を立ち上げての「大規模修繕工事」があります。
何の工事をするのかというと、経年劣化した共用部、特に外装のお色直しになります。そのため、同等の材料を使用して新しい同じ外観になります。メインの工事はタイルとシーリングと塗装、それと防水です。
サッシなどの断熱改修や設備配管の更新が無ければ、専有部には影響がないため、工事中は自宅にいなくても終わってしまいます。他に改修工事があれば管理組合には技術的な検討事項が発生しますが、一般的には長期修繕計画の予算の範囲内なので大きな変化や変更はありません。
工事会社も外装に関係するだけの少ない工種なので、面積や長さに単価(材料+労務)を掛けた合計金額の、単純明快な見積書を提出してきます。
つまり「大規模修繕委員会」は、言い換えれば「高額工事発注委員会」になります。人生で高額な発注をするという機会はなかなか無いので、それなりに達成感があります。その結果、工事の発注が終われば「後は工事会社におまかせします、早く終わってね」といった管理組合が数多く存在します。

しかし、工事を発注したのですから是非とも工事会社と良い関係性を保ち、積極的に会話をしてください。
もし工事が止まり、工期が伸びればマンションの外周には足場が残り、日当たりは悪く、通行にも支障が生じます。台風などの自然現象ならば仕方ありませんが、事故は避けなければなりません。安全に工事が進むように管理組合の気持ちを込めて、できるだけ時間を作って関与してください。

一般的なマンションの修繕工事現場の1日のスケジュールは以下のようになります。
・ 08時00分 安全朝礼(ラジオ体操、当日の作業の確認と注意事項)~ 安全ミーティング
~ 作業前点検 ~ 修繕工事
・ 10時00分 ~ 10時20分 午前の休憩
~ 修繕工事
・ 11時30分 ~ 12時00分 職長参加の翌日の作業内容と搬入資材等の打ち合わせ
・ 12時00分 ~ 13時00分 昼食休憩
~ 修繕工事
・ 15時00分 ~ 15時20分 午後の休憩
・ 15時20分 ~ 17時00分 修繕工事 ~ 後片付け、ゴミ出し

ここで注意していただきたいのは、工事開始時間を午前9時で要望するマンションがある事です。
マンションの住民の通勤や通学などが主な理由ですが、1日の作業時間が1時間短くなると全体の工事期間が伸びるだけでなく、作業員さんの1日の収入も減るので、当然ながら工事金額も上がります。
午前8時から支障の無い場所からの修繕工事が始められるよう、住民の理解が得られるように丁寧な事前の説明会を開催してください。

団地型のマンションで見られる光景として、棟と棟の間で工事がある時に、住民の通路を作っていることがありますが、これは事故の元になります。ニュースで工事現場の近くで事故が発生したのを見ることがありますが、工事現場に近寄らなければ安全です。工事期間中は我慢して迂回することを考えてください。
そうすることで、住民が通るたびに作業を中断したり、誘導員を配置する必要もなくなり、作業効率も上がります。工事を安全に短期間で終わらせるためには、マンションの住民の協力が必要なのです。

次回は、マンションにおける工事の安全(その2)について説明します。

(職長・安責者教育講師/マンション管理士 福森 宏明)