管理組合の考察(第五十歩)
■管理組合を共同運営する会(その4)
いよいよマンション管理アプリ「クラセル」の稼働日、5/1が近づいてきた。
無事に稼働するための準備作業が大変であった。
まずは、クラセル用の銀行口座の開設である。クラセルでは稼働後の資金管理をスムーズに行うため系列の銀行の口座が必須になっている。一般の管理組合は法人格がない。現在、法人格のない団体が銀行口座を開設するのはなかなか困難である。法人格のない団体がマネーロンダリングの温床になっていることが大きな原因である。
今回は「クラセル」使用のためということで、クラセル提供会社を通じて銀行口座を開設した。もちろん、そのために管理規約やクラセル使用契約のための総会議事録などの必要書類を整理して銀行に提出した。
この口座は、クラセルアプリを使用するために開設するものなので、デジタル使用が基本のため、通帳やキャッシュカードが原則ない。しかしながら、管理組合の構成員の年齢が高い管理組合では通帳は必須であり、管理組合の出納業務もすべて銀行送金で行うのは、規模が小さい管理組合では無理である。その意味でキャッシュカードも必要である。
次に、取引先情報の整理である。「クラセル」で出納業務を行うには、取引先の支払い条件などの詳細をシステムに事前入力しなければならない。設備点検料など定期・定額のものなどである。また、業者によっては自動振替で支払を行っているものもあり、クラセル用の新規開設銀行口座での自動振替承諾書の提出など細かな作業が続いた。
制度移行で最も困難であったのは、中間決算とそれに伴う旧銀行口座からクラセル用新規銀行口座への資金移動である。
会計・出納業務を公正に行うため、管理組合ではクラセル導入を決定した時点で、導入予定日の前日までは旧来のマニュアルで会計・出納業務を行い中間決算をも行う。5/1以降はクラセルで業務を行うとことは決定していた。それ以降それなりの準備をしていたが、中間決算書を作成するのはそれなりの手数がかかった。
この中間決算書にもとづき、4/30付で管理費会計と修繕積立金会計の資金移動をおこなった。旧口座のあった銀行とは債権・債務関係がなかったので、1000万円以上の資金移動でも抵抗を受けなかったのは幸いであった。
最後の問題は、並行して行っていた排水管交換工事に関してである。工事そのものは4月中に終了し、支払いはクラセル稼働後に行うことになっている。「クラセル」は管理組合の支払いは複数の人間によって承認されなければ行えない。従って、担当者の権限を定め、そのものが承認で来るような資料をPDFなどでシステム上に保管せねばならない。
システム内で支払いを行うということは、ある意味で面倒なことである。しかしながら、公正な経理手続きをおこなうためには、見えるかが大切であり、ある程度の面倒くささは甘受しなければならない。
これらの作業期間中でも、中間決算のためや排水管工事終了に伴う支払い承認のための理事会などが行われ、その準備や議事録作成も行った。
(マンション管理士 渡邉 元)