マンションの仕組み(第五十三歩)

■花鳥風月 / マンションのシックハウス(その1)

住戸内での室内空気汚染に由来する様々な健康障害を総称して「シックハウス症候群」と言います。
もっとも大きな原因は、化学物質を放散する建材・内装材などの使用による室内の空気汚染です。
化学物質が原因で同じような症状を発症するのに「化学物質過敏症」がありますが、同義語ではありません。
「シックハウス症候群」は化学物質の室内濃度レベルが厚生労働省の定める指針値を超えているために健康障害となるので、その問題となる室内から出ると症状が軽快しますが、「化学物質過敏症」は問題となる室内から出ても、様々な化学物質に反応します。

では、化学物質とは何なのかというと、身の回りにあるものは中学校で習った元素の周期表ある118種類の元素で構成されている化学物質でできています。つまり、人間の体を構成するものも含めてすべての物質は化学物質で、もともと自然界にあった化学物質と人間が作り出した化学物質があります。
化学物質=危険という概念は間違っていて、安全か危険かはその物質の曝露量・摂取量・時間やその人の体質なども関係しています。

日本の気候は、夏は高温多湿で、冬は低温低湿です。その季節の中を伝統工法の木造住宅で暮らしてきましたが、1973年のオイルショックで省エネルギー対策が叫ばれるようになり、住宅の高気密・高断熱化が推進されました。しかし換気対策が遅れたために結露などが起こり、ダニやカビなどが発生し、新建材の普及によるVOC(揮発性有機化合物)の問題も発生して室内空気汚染が問題となりました。
2003年の建築基準法改正で、シックハウス対策として石綿の使用禁止、クロルピリホスの居室使用禁止、ホルムアルデヒドを含んだ内装材の使用制限、そして換気設備の設置が義務になりました。

有名なホルムアルデヒドは多くの木質系の接着剤の原料として使用されています。また、壁紙用合成でんぷん系接着剤の防腐剤としても添加されているので、室内の空気を汚染します。

建材にF☆☆☆☆(フォースター)の表示を見ることがありますが、☆の数はホルムアルデヒドの発散量を
表します。第1種ホルムアルデヒド発散建築材料は無等級で使用禁止、第2種F☆☆から第3種F☆☆☆は使用面積制限がありますが、F☆☆☆☆はホルムアルデヒドの放散速度が遅いため使用面積制限がありません。また、制限があっても5年経過のものについては制限がありません。
しかし私達は日々多くの日常生活用品を購入しています。殺虫剤・防虫剤・塗料・家具・家電・衣類・玩具なども化学物質発生源のため、築5年経過したマンションでも絶えず空気汚染は続いています。

成人は1回の呼吸で吸い込む空気量がおよそ0.5Lで、1分間に約20回の呼吸をすると1日に15,000L~20,000Lもの空気を体内に取り込みます。その呼吸量を重量に換算すると、1日に12kg~15kgの呼吸量になります。これほど毎日大量に体内に室内空気が取り入れられているため、微量の空気汚染でも健康に悪影響を及ぼす要因になります。
時々24時間換気を切っている住戸が散見されますが、汚れた空気の排出は換気の基本です。

生活環境において、すべての微生物を排除することは不可能です。重要なのは、室内環境を適切に管理し、微生物が増殖できる環境を作らないことです。カビやダニの生育に適した条件はほぼ同じで、室温が25度~30度、相対湿度は60%以上です。
WHOが強く勧告している冬季室温18度以上を守り、各部屋での温度差を無くして日常生活での結露を予防することが重要です。相対湿度を上げないように、調理や食事中は換気扇を回し、洗濯物の部屋干しはできるだけやめて、入浴後は浴室を乾燥させるなど絶えず気を配りましょう。

多くの化学物質は、体内の脂肪細胞に蓄積されていきます。脂肪細胞は皮下脂肪の他に内蔵・脳・筋肉・神経組織にもあります。脂肪細胞内に蓄積された化学物質は、代謝により遊離し、血液によって肝臓まで運ばれて解毒・分解されるので、運動や入浴などによって、脂肪組織を流れる血流を増加させることにより、代謝や肝臓での解毒作用を盛んにすることができます。

次回は、マンションのシックハウス(その2)について説明します。

(シックハウス診断士/マンション管理士 福森 宏明)