マンションの仕組み(第五十九歩)
■花鳥風月 / マンションの植栽積算
マンションの建設工事の見積書は多くの専門工事業者が関係するので、とてもページ数が多くなり、一般の方はその厚さを見ただけで拒否反応を起こしてしまうと思います。専門工事業者が多いとは、工種が多いということで、マンションの内装仕上げ業者さんだけでも例にあげると、「造作」「ユニットバス」「壁・天井」「床シート」「家具」「金属製建具」「木製建具」「ガラス」「床暖房」「住宅設備」「照明設備」「金属」「石・タイル」「フローリング」「畳」などの多くの業者さんの工事が必要ということです。
これらの専門工事の金額は直接工事費という名称で区分されます。例えばクロス(壁紙)業者さんの工事に関して見積書に記載される金額は、クロス代(材料費)+クロス張り工賃(労務費)+自動糊付機や照明や材料運搬費(直接経費)などになります。そして多くの工種ごとの見積りの集計が直接工事費となります。ここまでは単純に工事に係わる費用なので理解しやすいと思います。
皆さんが面倒くさがってよく見ない工事費が間接工事費です。間接工事費は工事の円滑な進行と品質確保に不可欠な費用で、共通仮設費と現場管理費に分けられます。共通仮設費
とは多くの業者さんが工事をするために共通で必要な仮設費で、測量費、工事事務所、水道光熱費、脚立・足場やカラーコーンなどの安全費、清掃代などになります。
現場管理費とは工事現場を運営・管理する費用で、保険料や給料や事務用品や交通費などです。
そして皆さんが理解できない費用が一般管理費になります。一般管理費とは工事に直接関係はありませんが、工事を請け負う建設会社を経営するための費用になります。
さらに皆さんが分からないのが法定福利費です。(福利厚生費ではありません)建設業の
中小の下請け会社では以前から各種保険の未加入が問題になっていました。職場環境を整えるため2013年から記載が義務付けられたので、前回の大規模修繕工事では計上されていなかった可能性があります。
直接工事費を算出して間接工事費を決定して、一般管理費を算出します。そして多くの工事見積書ではこの順番が逆になって作成されます。皆さんは直接工事費が気になるので最初の方の見積り内容は、全体の金額だけを見る結果になります。しかし、直接工事費は工種ごとに算出するので、共通仮設費を決定する際に共通仮設費に重複する内容が生じることがあるので注意が必要です。
植栽の積算では設計図書である外構(植栽)図面で寸法規格を確認します。仕様書には品質規格として「樹姿」と
「樹勢」が記載されているので熟読します。図面から必要な樹種と規格(樹高(H)、幹周(C)、高木の枝張・低木(成木で3m以下)の枝張(W)、株立数(BN)単位はメートルです)を拾い出して、それぞれの単価を算出して合計したものが材料費です。
次に工事工程を検討して、植えるエリア・本数・順番を決めて植付けする造園業者さんの人数を算出したものが労務費です。工程によりますが、まとめて植えられれば人数も平均化ができ効率的に植えられます。1期・2期のようにマンションの竣工時期が変わると、2回の植栽準備と撤収が必要になり高額になります。職方さんが遊ばないように、キツイ仕事にならないようにバランスを取ります。
樹木を植える植穴は樹木の根鉢の大きさで変わります。当然ですが人力では掘れないので重機(バックホー)で掘ります。多くの皆さんが勘違いしているものにパワーショベルがあります。どちらも油圧ショベルですが、パワーショベルはショベルが上を向いていて地表面より上の掘削に使われ、バックホーはショベルが下を向いていて地表面より下の掘削に使われます。
植穴の大きさと深さでバックホーの機種を選定して、植付けする樹木の重量と範囲で吊り上げるクレーン車(ラフタークレーン)の能力を選定します。これが直接経費です。
実際には、樹木を保護する幹巻きや樹木を支える支柱、肥料などの材料費や労務費が必要になります。これらを合計したものが植栽工事の直接工事費です。
このメルマガの2025年4月の49歩で「建設業法の改正」について説明しましたが、これからは「適正価格」という言葉がキーワードになります。強引な値引き依頼や差し値は建設業法違反になります。
数社から見積もりをとって最安値の金額を別の会社に提示して減額を要求することはできません。
建設会社は適正価格が分かるような詳細な見積書を提出してきます。まとめた一式金額やお得意様値引きなどの不明瞭な金額提示はできなくなります。当然ですが管理組合は適正価格を見極める能力が必要になりますので、労務費や材料費の上昇、国土交通省の発表などを注視していく必要があります。
次回は、マンションにおける樹木重量について説明します。
(建築積算士/マンション管理士 福森 宏明)
【執筆者プロフィール】
福森 宏明(ふくもり ひろあき)
長年にわたり、大手建設会社で実際に多くのプロジェクトを建設してきた現場所長経験者。
清掃工場等のプラント施設や駅前の都市再開発からタワーマンション、震災後の復興支援から廃炉事業まで携わってきました。マンションでは100億円以上の団地型マンションも数件建設しています。
「環境省・文部科学省・農林水産省指定の環境教育指導者」及び1000山登山家としても活動中。
本連載では、土木・建築・造園の専門家として最新の建設技術、実際の建築現場とメンテナンス、リノベーション、住まいの安全対策、自然環境などを執筆中。
資格:一級(土木・建築・造園)施工管理技士/建築積算士・自然再生士/マンション管理士
