マンションの仕組み(第六十歩)

■花鳥風月 / マンションの樹木重量

実際に樹木を植えるにあたり、樹木を吊上げるクレーン車の性能やセット位置を細かく計画します。
一回セットしたクレーン車の旋回範囲で複数本が植えられれば、無駄な動きが無く効率的です。

樹木の重量計算は、彰国社の「建築空間の緑化手法」が参考になります。
「地上部」 W=3.14k(d/2)2Hw(1+p)
k=樹幹形状係数(概算の場合0.5)、d=目通り直径(m)、H=樹高(m)
w=樹幹の単位体積重量(1100~1500kg/㎥)
p=枝葉の多少による割合(0.2~0.3)
「地下部」 W=3.14kA3w
k=鉢の形状係数(並鉢:0.15、落葉高木:0.13、常緑高木[深根]:0.17)
A=根鉢直径 A=4D+0.12(m)
D=根元直径(d>0.2の時:D=1.5d、d<0.2の時:D=2~2.5d)
w=土壌の単位体積あたり重量(1400~2000kg/㎥)

例えば、地際からh=1.2mの目通り直径d=0.3mで、樹高H=8mの高木の場合
「地上部」 W=3.14×0.5×(0.15×0.15)×8×1300×(1+0.3)=477.6
「地下部」 W=3.14×0.15×(4×1.5×0.3+0.12)×(4×1.5×0.3+0.12)
×(4×1.5×0.3+0.12)×1700=5,667.3
よって、樹木としての重量は、地上部477.6kg+地下部5,667.3kg=6,144.9kgになります。

自然災害で山の斜面が深層崩壊する場合、この樹木の重量が大きく影響しています。樹木1本で約6トンなので、森の場合は10本だと60トンとなり、一気に崩壊・落下して被害が大きくなります。

この例では根鉢の直径A=1.92mとなり、逆算すると根鉢の厚さは1.15mになり、根の底から樹冠(頭頂部)まで9mで、重量が6.1トンの樹木ということになります。
これではトラックに乗らないので、実際に移植する場合は事前に根回しなどをして、根鉢を小さくします。
根鉢の直径をA=1.5mほどにすると根鉢の重量は2.4トン~2.8トン程度になります。さらに地上部の枝葉を剪定した結果、地上部400kg+地下部2600kg=3000kg(3トン)程度になります。
この移植する樹木の重量と植える位置までの距離(作業半径)でクレーン車の大きさを選定します。

掘り取りする際の一般的な根鉢の直径は、樹木の根元直径の3倍~5倍です。根鉢の厚さは樹木の浅根性と深根性で変わりますが、根元直径の1.5倍~2倍とされています。
移植の理想は可能な限り大きな根鉢とすることです。貴重な樹木や移植後の活着を良くするためには当然の事なのですが、新植するマンションの敷地までトラックで運搬できなければ仕方がありません。
このように移植される樹木は本来の樹体を削られて、大きなダメージを受けたまま反抗することもできずに、育った環境とは違う、気象・土壌条件の知らない敷地に向けて運ばれて行くのです。

新しい場所で樹木の植付けが終わったら、「お前はここで生きていくんだよ」と話して触ってあげましょう。
これは意外と大切で、心配して弱っている樹木と会話をすることによって、樹木に生きる力を与えます。

樹高15mの特大のケヤキを
掘り取り、根鉢の根巻きをして
剪定・枝折り後にトレーラーで
運んでいる状況です。

活着に必要な細根の乾燥及び
根鉢の崩れを防止するために
根巻きで麻布を巻いています。

次回は、マンションの内装工事について説明します。

(一級造園施工管理技士/マンション管理士 福森 宏明)

【執筆者プロフィール】
福森 宏明(ふくもり ひろあき)
長年にわたり、大手建設会社で実際に多くのプロジェクトを建設してきた現場所長経験者。
清掃工場等のプラント施設や駅前の都市再開発からタワーマンション、震災後の復興支援から廃炉事業まで携わってきました。マンションでは100億円以上の団地型マンションも数件建設しています。
「環境省・文部科学省・農林水産省指定の環境教育指導者」及び1000山登山家としても活動中。
本連載では、土木・建築・造園の専門家として最新の建設技術、実際の建築現場とメンテナンス、リノベーション、住まいの安全対策、自然環境などを執筆中。
資格:一級(土木・建築・造園)施工管理技士/建築積算士・自然再生士/マンション管理士