橋本ドンのマンション管理での嘘のようなホントの話?!(第五十七歩)

■建物の老い、人の老い、社会の変化に対して、変化を迫られるマンション管理

12月に入り、更に寒くなりましたね?!
今年もあと僅か、慌しい師走を奔走しています、マンション管理士の橋本です。

先日、マンションの管理組合の組合員さんとの交流会があり、色々な話を聞くことが出来ました。
その時の話の中心は「第三者管理」について。

実は一年ほど前にも、この話題でメルマガに書かせて頂きましたが、昨年も同じぐらいの時期に交流会でも話にあがっていました。
交流会に出られる管理組合員さんは、組合運営に前向きで積極的に参加されている方が多いのですが、昨年は「自分のマンションには無縁な話だな?」という方が多かった印象です。
しかし今年は、周りや協力者、家族などの事情や健康面での不安から、将来の組合運営を心配される方が増え、「他人事ではない」と感じる人が多くなり、より踏み込んだ話が出てきました。

なお第三者管理(おもに共用部管理会社が行う事を想定して)を整理しますと
• マンションの人の老いへのカバー
• 専門家による管理運営が出来る
• 組合員の負担の軽減
• 組合員同士の関係悪化を防げる
ここで強調したいのは「人の老い」をどうカバーするかです。理事会の役員はボランティア的に担うことが多く、年齢や健康状態に左右されやすい。そこを専門家が補うことで、組合運営の安定性がぐっと増します。

デメリットは
• 丸投げすると組合員で管理運営がコントロール出来なくなる
• 一度導入すると元の組合運営に戻すのが困難
• 運営の透明性が低くなる可能性
特に「利益相反」のリスクは大きな懸念です。工事などを進められ、資産を勝手に使われ、組合のためではなく管理会社の利益のために動かされる可能性があります。
一度握られてしまうと、話し合いの場を作ることすら難しく、改善が困難になるケースもあります。
重要なポイントは修繕積立金や管理費が「本当に自分の資産価値のために使われているのか?」を確認する視点が欠かせません。

このようなデメリットの可能性(みんながみんな自分勝手な管理会社でない、しっかりされている会社があるのも事実で、100%に近い状況で大丈夫と言えればいいのですが今はなかなかいい切れませんので、)がある中、メリットと天秤にかけると判断か出来ないのが現状で静観している組合がいるのではないでしょうか?

ちなみに新築マンションでは分譲時から第三者管理で始まっているケースもあります。
その場合、組合運営の経験がないため、管理費や修繕積立金が適切に使われているかを注意深く見守る必要があります。
「新築だから安心」と思いがちですが、制度設計の段階から第三者管理が組み込まれている場合は、むしろチェック体制が弱くなる可能性もあるのです。

ただ、現状マンションで起こっている二つの老い(建物の老い、人の老い)に追い討ちをかけるように、社会の構造変化(人口減少による現場の働きて不足)やコロナ以降、戦争等の影響からの急なインフレにより、管理会社の経営事業の見直しから、収益性の低いマンションとの委託費用の値上げやそれに伴う管理会社からの管理切りが行われるなど、これまでの全部委託方式では、コストだけでなく管理組合の運営自体の対応出来なくなりつつあります。

そう、マンション管理は止めることができない“生き物”です。
値上げや管理切りをされたマンションは「ちょっと待って」と言っても止められず、待ったなしで対応を迫られます。

ただそれに対する受け皿がないのが、現実に問題になっています。
あるとすればこの第三者管理になりますが、上記の理由から、まだまだ制度としてはプラッシュアップする必要があります。

それほど、これまでマンション管理は管理会社へ一括委託(お任せ)かもしくは、自分たちだけで何とかする自主管理の二択での管理の時代が続いており、その他の選択肢を考えてこなかったこれまでの経緯があります。
実際に共用部管理会社による第三者管理はこれまでの管理方式(一括委託)のさらに進化延長方式にほかなりません。

では、第三者管理として、管理会社以外はどうなのか!
実際にマンション管理士や他の専門家という選択肢もあるかもしれませんが、正直、全ての業務、特に物件規模が大きければあるほど対応に限界あるのが現状です。

そのため、今後の運営にあたりどうすれば改善できるのか?を考えますと、
今後の選択肢
• 管理会社に任せる(利益相反しないよう担保を取る)
• マンション管理士など専門家に委ねる(中小規模向け)
• 理事会を存続しつつ、理事長や監事を専門家に依頼して管理会社をコントロール
• 会計など一部業務のみ外部委託、その他の業務を自分たちが行う。

個人的には「理事会を存続しつつ、理事長や監事にマンション管理士を入れる」といった内容が、一番バランスが取れていると思います。
理事会がなくなるとリスクが増えるため、専門家を部分的に入れてコントロールするのが理想的です。
ただ、これには、コストの問題、人も問題、マンションの規模によっても大きく変わってくるとは思います。
特に、資金のないマンションでは難しい場合もあります。
だからこそ今後は「分業」「カスタマイズされた管理方式」が今後の主流になると考えています。
そしてそれを後押しするような会計ソフトや運営面(ネットを使った予約等)でもサポートするDXも進められており、それらを組み合わせた管理になるのかもしれません。
その際に、マンションの現状を把握して、それに合ったカスタマイズが出来る、柔軟な考えを持ったコンサルできる、コンサルタント、専門家が今後必要になってくると思われます。

現状は、マンション管理は「建物の老い」「人の老い」「社会の変化」という三重苦に直面しています。その中で、第三者管理は有力な選択肢ですが、メリットとデメリットを冷静に見極める必要があります。
またカスタマイズの動きも、まだまだ、そういった対応は難しいかもしれませんが、時代の変化は待ったなしに動いており、早い段階での必要性もあるかと思います。
その問題に対処できるように、私も含めてマンション管理士がそのサポートをできる専門家になれればと考えます。この時代の急な変化にいかに対応できるか、自分自身も日々考えつつ行動していきたいと思います。
では、また次回お会いしましょう!
それでは、また!(マンション管理士 橋本 和聡)

【執筆者プロフィール】
橋本和聡(はしもと かずとし)
賃貸管理、マンション管理の“今”を、現場から直送!の意気込みで執筆しています。
25年以上にわたり、賃貸管理、マンション管理の現場に携わってきたベテラン。現場での気づきや実践的なヒントを、ブログとSNSで発信しています。
📘ブログ:https://note.com/brigebookdon/n/n56a2b8bd69f9note
🔗SNSまとめ:https://lit.link/brigebookdon
資格:マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、CPM(米国不動産経営管理士)、第二種衛生管理者