特別寄稿 YKKAP 分譲マンションの窓・玄関ドア改修工事と補助事業 2025年版その2

■分譲マンションの窓・玄関ドア改修工事と補助事業 2025年版その2

先月に引き続き「分譲マンションの窓と玄関ドアについて」のお話をさせていただきます。
最初に先月のお話と、昨年の3回のお話について、題目だけ振り返りをさせていただきます。
【2024年の3回のお話について】
その1:窓・玄関ドア改修工事の補助金について
その2:工事契約前のスケジュールについて
その3:工事契約後のスケジュールについて
【2025年11月のお話について】
① 改修工事が必要かどうかは、建物・管理組合の状況によってアドバイスが必要
② 改修工事の方法は大きく分けて4つあるが、一番割安なのは既存窓の「部品交換」。
ただし割安が故の問題点も多々存在する。
このようなお話をさせていただきました。
今回は4つある改修工事の方法について、「部品交換」以外の3つの方法について、それぞれメリット・デメリットをお話しさせていただきます。

【方法その2:既存窓の「ガラス交換」】
窓の面積の大部分を占めるのはガラスです。既存窓のお困りごととして「ガラス面の結露」を挙げられる方は多くいらっしゃいます。そうであればこのガラス面に高性能(高断熱)な製品を採用すればお困りごとは解決するのではないかと思われると思います。
既存窓のフレーム(部材)はそのままで、ガラスのみ交換する方法として専用の製品も発売されております。非常に高性能なガラスですので結露には抜群の効果を発揮します。既存窓のお困りごとがガラス面の結露だけでしたらこれで充分と考えます。しかしながら40年以上経過した窓は、戸車やレールの劣化による動作不良、ゴム部品や樹脂部品の劣化によるすきま風等の問題も発生しているかと思われます。この動作不良とすきま風に関して既存窓の「ガラス交換」は何の効力も発揮しません。前回、既存窓の「部品交換」について「築後20年ぐらいの物件であれば実施しても良い」とお伝えしましたが、既存窓の「ガラス交換」についても同様のことが言えるかと思います。

【方法その3:既存窓の内側に内窓設置】
この方法は結果として「二重窓」になります。「二重窓」は断熱・防音に抜群の効果を発揮します。最近ではホームセンター等でも取り扱いがあり、ユーザーの方々も購入しやすくなっております。YKK APでも「ウチリモ」という商品名で発売をしております。比較的お求めやすい金額であることと、分譲マンションにおいては「専有部分」工事になることで、多くの方が採用されております。ただし既存の窓(外側の窓)については、何も手を付けられていない訳ですから、根本解決にはならないと思います。更に基本的には「専有部分」のお話になりますので、管理組合全体で議論する話でもないかもしれません。

【方法その4:既存窓全体を交換】
この方法は「カバー工法」と一般的には言われています。既存窓のガラス戸を取り外し、残った窓枠(レール)の上から新しい窓枠を被せて、新しいガラス戸・網戸を設置する方法です。被せるから「カバー工法」という言い方をします。窓枠・ガラス戸・網戸のすべてが新しくなりますので、安定した高い性能を発揮し、改修後の効果(使い勝手、性能)も充分に体感できます。デメリットは4つの方法の中で一番費用がかかるという点です。管理組合にとっては一番のネックになる部分と思います。しかしながら多くの管理組合では「既存窓全体を交換」する費用について、長期修繕計画に組み込まれていないケースがあります。「いくらかかるか?」を知らないまま、築後40年、50年を迎えるのではなく、計画に組込むことで準備ができると思います。建築当初に計画されていたとしても、その時点の費用と現在の費用では大きく異なります。お住まいのマンションでの計画はどうなっているかチェックが必要です。
私たちは「いくらかかるか?」のご案内もできます。マンションごとに異なりますので、現地調査・建築意匠図のご提供をいただいた上で御見積をさせていただいておりますので、申し付けていただければと思います。国や自治体では「補助事業」も設けています。せっかくある制度ですから、こちらも活用しながら進めていくことで費用負担を抑えられる部分もあるかと思います。

もうひとつ最近の動きとして、マンション全体の窓を改修するのではなく、優先部位を決めて実施するケースが増えております。これについて解説させていただきます。マンションの開口部(窓・ドア)は大きく分けて以下の3つに分かれると思います。

A.南側(バルコニー)に面した窓
B.A以外の窓
C.玄関ドア
Bについてはもう少し細かく分けられるかもしれませんが、今回は上記3つの区分とさせていただきます。この中で優先順位をつけてみてください。それぞれに特徴があります。
Aについては居間や食堂があるので、住戸内の滞在時間としては一番長い部屋になる。洗濯物を干したりするので、窓の開閉頻度が多い。
Bについて寝室や納戸になっているケースが多く、Aほど広くない部屋に家具が多くある。窓の開閉頻度は極めて低い。
Cについては窓と比べて開閉頻度は圧倒的に多いが、玄関回りなので快適性は窓ほどは不要と考える。
上記はあくまで一例です。別の考え方もあると思います。ここでは上記の考え方をベースに優先順位を考えてみます。そうするとA → C → Bの順番になるかなと思います。今まで私が対応させていただいた管理組合の事例はC → AとBは同時に実施というお客様が多かったです。 Cの玄関は法律上「鉄製」であることが求められますので、錆等の見た目の問題もあり、「先に改修したい」という要望があります。しかしながらBは場合によっては物置部屋です。物置部屋の窓まで改修する必要があるかどうかは議論の余地があるかもしれません。寝室になっている場合でも開閉頻度は極端に低い訳ですから、であれば「方法その3:既存窓の内側に内窓設置」でも良いのではないでしょうか。開放廊下に面した窓が多いと思いますので、二重窓化により、窓回りの防犯対策にもなります。誤解の無いように、建物全体の性能を向上させるには全体を改修することがベストであることは間違いないです。しかしながら管理組合にとって、他の工事の予算も確保しなければなりません。その中で優先順位をつけることは大切かと思います。

改修工事の検討にあたっては、業者への直接相談でも結構ですし、マンション管理会社・マンション管理士・コンサルタントの方への相談でもよろしいかと思います。YKK APではホームページ上で「お客様相談室」という窓口を設置しております。ぜひご活用いただければと思います。
(YKK APお客様相談室:お問い合せ[一般のお客様用] -YKK AP株式会社)
ご相談をいただくことで、「共用部分」の改修工事の実施についての様々なアドバイスをさせていただきます。

YKK APでは窓の「劣化」を体感いただける常設展示場もご用意があります。お問い合わせをいただければと思います。

次回は次年度の国の補助事業の見通しが明確になった頃(年明け2月くらい)にご案内ができればと思っております。
最後までお読みいただきありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。
(YKK AP株式会社 首都圏改装支社 長田 克也)