竹内恒一郎の現場からの手紙(第五十五歩)

■初めまして、マンション管理士の竹内です

はじめまして。マンション管理士、一級建築士の竹内恒一郎と申します。今回執筆させていただくにあたり、簡単な自己紹介をさせていただきます。

私は、1946年(S21)に埼玉県所沢市に生まれ40年ほど過ごし横浜市泉区へ引っ越してきました。
当時の写真を見ると浮浪児のようですが、終戦直後で廻りは皆同じような状態でした。虚弱児童で、小学1年の時は警察が調べに来るほど学校を休んでいたようです。身体を鍛える目的で中学、高校と剣道部に入りましたが、たいして強くならなかった代わりに打たれ強くはなりました。
浪人時代に身長が7cmも伸び、父からは少しは世間体を考えろと言われましたが、どうにもならず、現在は180cmになっています。某建設会社に就職し、構造設計、建築営業、マンションの開発分譲、子会社の管理部門の改革と、約10年ごとにいろいろなことを経験し、その間の成功体験、失敗体験いろいろありましたが、失敗体験が全て今の仕事に役立っています。同じ会社で42年間勤務し、同じ顔を見続けてきましたので、定年後は知っている人のいない別世界で仕事をしてみたいと思っていました。
定年間際に自宅マンションの大規模修繕委員になり、片手間でマンション管理士試験に挑戦しましたが見事に3回失敗しています。定年後4回目でようやく合格しました。自宅マンションの大規模修繕工事でしっかりしたコンサルタントとの出会いがあり、そのときの実務経験がその後のマンション管理士としての貴重な財産となっています。
一級建築士としての実務能力はもうありませんが、現在の多くのマンションが建設された40~50年前を現役として見てきていますので、口先だけの一級建築士ですが何かお役に立てる部分があると思います。
私は机上で条文等を読んでもなかなか頭に入らないタイプで、常に現場経験が先になり、後から本を読むということを続けてきました。そのため、建築基準法も拾い読みしかしていません。

前置きが長くなりましたが、私は大学の卒業論文はコンクリートでした。大学との関係で、某大手建設会社の技術研究所で、当時研究が進んでいました人工軽量骨材を使ったSRC造のかなり大きな病院を建設するときのコンクリートの品質管理を行いました。当時は川砂利がとれなくなり、海砂の利用や砕石への移行が模索された時期で、人工軽量骨材もそのような環境で数種類が市場に出ていました。主な使用目的は建物の自重を軽くすることによる経済効果で、セメント量の削減も研究テーマであり、フライアッシュ等の混和剤の研究もされていました。その後は砕石を使用する技術開発が進み、現在では人工軽量骨材の使用はかなり限定的になっているようです。
現在は100年住宅が盛んに言われていますが、コンクリート材料としての物理的耐用年数は、軍艦島という壮大な実験場を得て、研究者が日々研究されています。しかし、建築物の構造体としての鉄筋コンクリート(RC)は、あくまでも私見ですが、以下のような歴史をたどったと思っています。
1916年に、軍艦島が日本最古のRC造の高層住宅として建設されました。
1923年に、関東大震災の痛手の後、耐震性、耐火性が評価された丸ビルが建設され、RC造が普及してきました。
この頃はまだ、コンクリートの調合設計や構造計算も研究・開発段階であったものと思われ、どちらかというと安全サイドに設計・施工されていたものと推測されます。ちなみに、私が就職した1969年当時の構造計算は、乗除は計算尺(有効数字3桁)、加減はそろばんでした。
その後、前述の川砂利不足問題、砕石への移行、加えて構造計算がコンピューターの急激な発達により極限の経済設計が可能となり、それを悪用した姉歯事件等がおきています。構造計算をするには、先ず構造設計(計画)を十分に行い、建物を構造的にモデル化してから構造計算に入ります。一部の研究機関では、当時出始めていた卓上計算機を使用したシェル構造の設計もされていましたが、計算尺での計算が一般であった当時は矩形ラーメン(代表例として校舎をイメージしてください)がほとんどで、それ以外の異形ラーメン(デザイン上梁を設けない構造等)の計算にはある意味職人的な技術が必要となり、一般の建設会社や設計事務所ではあまり設計されませんでした。

以上のことから、あくまでも私見ですが、構造面及び材料面の複合物として見た建築物の耐久性には時代によってかなり変動が出てくることも考えられます。従って、一括りに100年住宅と行っても、個別の判断と対策が必要になるのではないかと思っていますが、ではどうするのかということに関しては、無責任ながら私の頭では答えがなく、後生に期待するのみです。

散歩道からはかなり脇道にそれ恐縮ですが、次回からは失敗談を含め、多少は参考になるかもしれない話をさせていただきます。

【ちょっと一服 花のお話し】
小学校の頃植物友の会(食物ではありません)で100種類以上の植物標本を作っていましたので、マンションにはまったく関係ありませんが、記憶に残っているものをご紹介します。
《ヘクソカズラ(屁糞葛》
日本一気の毒な名前の花です。
名前の由来は、葉を揉んで匂いを嗅げば納得します。
別名には「ヤイトバナ(灸花)」「サオトメバナ(早乙女花)」といったまったく逆のイメージの名前もあります。蔓性の多年草で、今頃は田舎の道ばたでよく見られます。

 

(マンション管理士、一級建築士 竹内恒一郎)

 

【執筆者プロフィール】
竹内恒一郎(たけうち こういちろう)
竹内マンション管理士事務所所長
某建設会社で、構造設計、建築営業、マンションの開発分譲、子会社の管理部門の改革などの経験。自宅マンションの大規模修繕工事での実務経験を活かし、マンション管理士としての巾広く活躍中。
・主な資格:一級建築士、マンション管理士