竹内恒一郎の現場からの手紙(第五十八歩)

■給排水管更新工事の事例報告

今回は「給排水管更新工事(汚水管も含む)」の事例報告です。
専有部分も含めた工事費に、修繕積立金を充当した事例ですので参考になれば幸いです。

Ⅰ 建物規模及び工事概要
1.建物規模:RC造6階建て、80戸(1994年3月竣工)
2.敷地面積:3,464.99㎡、延床面積:6,567.29㎡、専有面積:5,890.62㎡(平均73.63㎡/戸)
3.工事は設計監理方式で実施
4.工期:2023年7月~2024年1月(6ヶ月)
5.主な工事内容
1)共用部分の給水・排水管の更新工事(受水槽・ポンプ圧送方式は予算の関係で従来のままとし、引き続き実施予定の第2回大規模修繕工事に含め実施予定です。)
2)専有部分の給水・給湯管の更新工事
新築時、床コンクリートスラブ上のシンダーコンクリート@100の中に埋設配管されていたものを、室内廊下及び脱衣室の下がり天井裏に新規に配管することで、給水管・給湯管を同時に更新しました。(旧配管は水抜きの上、残置)
3)専有部分内の共用部分である雑排水竪管及び汚水竪管の更新工事
汚水管の耐用年数には十分余裕がありましたが、PS内に雑排水管と一緒に配管されていた関係から同時に更新工事を実施しました。
4)工事の必要性
雑排水管内の発錆による流量不良が頻発したことと、給水・給湯管がシンダーコンクリート内にあることから、漏水個所の特定に多大な労力と費用を要することから、実施に踏み切りました。
5)更新管材一覧
・共用部分

部位 従来の配管材料 更新配管材料
給水管 水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管

(VLP)

水道用高密度ポリエチレン管(PE)

<電気融着>

雑排水管 配管用炭素鋼鋼管

(SGP白管)

耐火塩ビ管(遮音シート巻き)(FSVP)
汚水管

(専有部分内)

排水用鋳鉄管(CIP) 耐火塩ビ管(遮音シート巻き)(FSVP)

硬質ポリ塩化ビニル管(VP)

・専有部分

部位 従来の配管材料 更新配管材料
給水管 ※共用部と同じ 水道用架橋ポリエチレン管(KPE)
給湯管 被覆銅管(CUP) 同上
雑排水管 配管用炭素鋼鋼管

<耐火構造部分>

(横引枝管)硬質ポリ塩化ビニル管(VP)

6.工事費内訳

Ⅱ 事前準備としての、長期修繕計画の見直し及び管理規約の改正
・2009年、第1回大規模修繕工事を実施。⇒修繕積立金の大幅な不足が顕在化しました。
・2011年の総会で、長期修繕計画を見直し、修繕積立金を大幅に増額しました。

【その際の対策】
・長期修繕計画を、建物本体と機械式駐車場に分けた。⇒駐車場管理費勘定を区分した。
・駐車料金収入の45%を管理費勘定に繰り入れていたが、これを廃止した。
・管理費の減収は、管理人の出勤日を週4日にすることと、定期清掃回数を1回減らすこと等で対応し、管理費は現状を維持した。
・駐車料金は、平面(17台、15,000円)、機械上段(21台、14,000円)、機械中断(21台、12,000円)、機械下段(21台、8,000円)を、一律4,000円減額した。
⇒当時から現在まで、利用者は61~62名で変化無し。
・その上で、従来、戸当たり平均5,840円であった修繕積立金を、当年2011年に5千円増額後、2014年、2017年、2020年、2023年に各5千円増額することが承認された。

・2017年の総会で、修繕積立金の見直しと、専有部分の給排水管の更新工事費に修繕積立金を充当できるように管理規約を改正しました。

【専有部分の工事費に修繕積立金を充当するための対応策】
・組合員からの強い要望により、修繕積立金の増額は2017年までとし、2020年、2023年の増額は取り止めた。 ⇒283円/㎡・月(国交省ガイドライン平均値252円/㎡・月)
・本管と一体的に工事をする場合の専有部分の配管工事費用に修繕積立金を充当する方法として、「新・マンション管理の実務と法律」2013年、齊藤広子、篠原みち子、鎌野邦樹共著(日本加除出版(株))を参考にしました。
・長期修繕計画に専有部分の工事費の計上を明記しました。
・標準管理規約第21条(敷地及び共用部分等の管理)に、以下の項を追加しました。
*専有部分の給水管、給湯管、雑排水管及び汚水管(以下まとめて「給排水管等」という。)の更新又は更生工事を含む管理は、区分所有者がその責任と負担において行うものとする。
*管理組合は、一定年数の経過ごとに計画的に行う、専有部分の給排水管等の更新又は更生工事について、総会の決議を経て管理組合がその責任と負担においてこれを行うことができるものとする。
*前項において、管理組合が行う更新又は更生工事を既に実施した区分所有者に対しては、公平の観点から応分の工事費相当額を総会決議により支出できるものとする。
・標準管理規約第28条(修繕積立金)に、以下の項を追加しました。
*前項(修繕積立金の使途を定めた規定)及び第25条(管理費等)の規定にかかわらず、長期修繕計画に組み込まれた給排水管等の専有部分の更新又は更生工事には、修繕積立金を充てることができる。この場合において、第21条(敷地及び共用部分等の管理)第2項(専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。)の規定を行ったものとみなす。
・標準管理規約第54条(決議事項)に、以下の項を追加しました。
*第21条(敷地及び共用部分等の管理)第2項に追加した以下の各号の実施。
➭管理組合は、一定年数の経過ごとに計画的に行う、専有部分の給排水管等の更新又は更生工事について、総会の決議を経て管理組合がその責任と負担においてこれを行うことができる。
➭前項において、管理組合が行う更新又は更生工事を既に実施した区分所有者に対しては、公平の観点から応分の工事費相当額を総会決議により支出することができるものとする。
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ご承知のとおり、以上の内容は今回の区分所有法及び標準管理規約の改正でほぼ明記されました。

Ⅲ 着工までの経緯
・2020年の総会で、2022年に設計監理方式で着工することが承認されましたが、コロナ禍に当たってしい延期を余儀なくされました。
・決議要件は普通決議でしたが、全員合意を目指し、コロナの蔓延状況を見ながら、住民説明会を2021年11月から土日・平日の午前、午後にリアルで行い、リモートでも昼と夜に行い、合計9回実施しました。
・69軒が参加し、11軒が売却等で不参加でしたが反対者はなく、予定より大幅に遅れましたが組合員の皆様のご理解もあり、前述の通り工事は無事実施できました。

この工事により、少なくとも給排水管に関しては100年住宅が見通せるものと思っています。

【ちょっと一服 花のお話し】
《フタリシズカ(二人静》
名前の由来は、諸説ありますが、能楽の「二人静」という演目に由来があり、源義経の側室だった静御前は、なくなった後菜摘女に「義経を弔うように神官に伝えてほしい旨」依頼したが、神官はその話を信じなかったため、静御前は菜摘女に乗り移り神官の前で舞を舞ったとのことで、静御前が二人いるように見えたことからこの名前がついたとのことです。
前回は静御前が一人、今回は亡霊と二人での舞姿に見立てています。
花言葉は「何時までも一緒に」 3月15日、5月26日、30日の誕生花です。
(マンション管理士、一級建築士 竹内恒一郎)

【執筆者プロフィール】
竹内恒一郎(たけうち こういちろう)
竹内マンション管理士事務所所長
某建設会社で、構造設計、建築営業、マンションの開発分譲、子会社の管理部門の改革などを経験。
自宅マンションの大規模修繕工事での実務経験を活かし、マンション管理士として巾広く活躍中。
・主な資格:一級建築士、マンション管理士