マンションと法(第五十二歩)

■新区分所有法の施行時期との関係での注意点

これまでにもお伝えしました区分所有法の改正法(新区分所有法)が令和7年5月23日に成立
し、同月30日に公布されました。そして、新区分所有法の施行期日は令和8年4月1日(一部例外あり)と迫っていることから、現在、関係省庁や関係団体などにおいて、新区分所有法に関する情報提供等がされています。
今回は、新区分所有法の施行期日や経過措置について注意すべき事項について見ていきたいと思います。
新区分所有法の施行期日や経過措置については、附則で定められています。
附則1条では、「この法律は、令和8年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。」として、原則的な施行日が令和8年4月1日であることが定められています。
また、附則2条では、次のとおり規定されています。
1項 第1条の規定による改正後の建物の区分所有等に関する法律(以下この条及び附則第5条第7項において「新区分所有法」という。)の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、第1条の規定による改正前の建物の区分所有等に関する法律(以下この条において「旧区分所有法」という。)の規定により生じた効力を妨げない。
2項 この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に旧区分所有法の規定により招集の手続が開始された集会については、なお従前の例による。
3項 この法律の施行の際現に効力を有する旧区分所有法の規定による規約で定められた事項で新区分所有法に抵触するものは、施行日からその効力を失う。
4項 施行日前に滅失した建物については、新区分所有法第3章の規定は、適用しない。ただし、施行日以後に第2条の規定による改正後の被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第2条の政令が施行された場合におけるその政令で定める災害により滅失した建物については、この限りでない。
すなわち、新区分所有法の規定は、原則として、現在の区分所有建物にも適用されます(ただし、
旧区分所有法の規定により生じた効力を妨げない。附則2条1項)。
次に、新区分所有法施行前に旧区分所有法の規定により招集の手続が開始された集会については、旧区分所有法が適用されます(附則2条2項)。
さらに、施行日時点において現に効力を有する旧区分所有法の規定による規約で定められた事項で新区分所有法に抵触するものは、施行日にその効力を失うことになります(附則2条3項)。
そうすると、令和8年3月31日までに招集された集会については、旧区分所有法が適用されるのに対し、同年4月1日以降に招集された集会については、新区分所有法が適用されるということになります。
そして、附則2条3項が定めるとおり、令和8年4月1日時点において、新区分所有法に抵触する規約は無効となり、新区分所有法が適用されることになります。
このような新区分所有法と従前の規約との関係を考えた場合、多くのマンションにおいては、次期総会の開催時期との関係で、関係法令を意識した総会運営が求められるといえます。
その一例として、新区分所有法39条1項では、「集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各過半数で決する」と規定されている(出席者多数決)ので、現在の標準管理規約の内容に基づいた特別決議の要件(組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上)は新区分所有法に抵触するものとして、出席者多数決に読み替えて運用すべきことになります。
来年度の総会が令和8年4月1日以降に行われるマンションでは、新区分所有法の内容を踏まえた総会の議事運営を行う必要があることには注意が必要となります。

(弁護士 豊田秀一)