マンションと法(第五十六歩)
■改正標準管理規約の公表
これまで3回にわたり扱ってきた「令和7年マンション関係法改正等に伴うマンション標準管理規約の見直しに関する検討会」のとりまとめ等を踏まえて、令和7年10月17日、国土交通省から改正標準管理規約が公表されました(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansionkiyaku.html)。
そして、国土交通省のWEBサイトでは、「今般の改正では、総会の開催手続きや決議要件といった、管理組合の運営上重要な内容が含まれており、皆様のマンションの管理規約も見直しが必要になります。マンション標準管理規約の改正内容をご確認いただき、皆様のマンションでも管理規約の見直しを進めていただくようお願いします。」という注意書きがあります。
また、上記注意書きとは別に、「<重要>各マンションにおいて管理規約を改正する際の留意点」として、「今後、各マンションにおいて管理規約を改正するに当たっては、規約の改正を決議する総会の招集手続きを令和8年3月31日までに行うか、または令和8年4月1日以降に行うかにより、手続き方法が変わります。特に令和8年4月1日以降に総会の招集手続きを行う場合は、改正区分所有法の規定に則った総会の定足数・決議要件を満たす必要があります。詳しくは以下の留意事項をご確認ください。」として、上記各ケースでどのような対応が必要となるのかを記載した「令和7年改正マンション標準管理規約を踏まえた管理規約の改正を行う場合の手続の留意点について」が掲載されています(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001965195.pdf)。

これまでの標準管理規約の改正において、国土交通省のWEBサイトに上記のような注意書きが付されたことはなかったと記憶しておりますので、今回の区分所有法の改正がマンション管理実務に与える影響の大きさに鑑みての対応であると考えられます。
上記留意点で取り上げられているのは、第52歩の原稿でもご紹介した事項となります。すなわち、改正法では、各マンションの管理規約の規定について、改正法の規定に抵触するものは、改正法の施行日以降、効力を失うこととされています。そして、改正法では、規約の改正等に関する総会の成立要件及び決議要件が変更されていることから、これらの部分については、改正法の施行日以降は、現行規約の規定との抵触が生じることになります。
そこで、今後、各マンションにおいて管理規約を改正するに当たっては、規約の改正を決議する総会の招集手続きを令和8年3月31日までに行うか、または令和8年4月1日以降に行うかにより、手続方法が変わることになります。
すわなち、①令和8年3月31日までに規約の改正に係る総会の招集手続を開始する場合には、現行規約の規定に則って、規約の改正を行うことになります。
これに対し、②令和8年4月1日以降に規約の改正に係る総会の招集手続を開始する場合には、現行規約の総会の成立要件及び決議要件は改正法に抵触して無効となることから、改正法の規定に則った手続により、規約の改正を行うことになります。つまり、定足数は「組合員総数及び議決権総数の過半数の出席」となり、決議要件は「総会に出席した組合員及びその議決権の各4分の3以上」となります。
改正法の施行日まで既に半年を切っており、来年開催される総会決議の有効性という重要な事項に関する留意点となりますので、今回の標準管理規約の改正を契機に、今一度ご確認ください。
(弁護士 豊田秀一)
【執筆者プロフィール】
豊田 秀一(とよだ しゅういち)
弁護士 マンション管理士 中小企業診断士
武蔵小杉あおば法律事務所(神奈川県弁護士会)所属
https://msk-aobalaw.com/
依頼者に「あんしん」をお届けすることをモットーに、一般民事、中小企業法務にかかわる案件を幅広く扱う。マンション管理士の資格取得後は管理組合の顧問業務にとどまらず、役員として管理組合業務に携わるなど、マンション管理に関する業務にも積極的に取り組んでいる。
