マンションと法(第五十七歩)
■改正区分所有法・改正マンション標準管理規約①
先月は、改正区分所有法等の内容を踏まえた改正マンション標準管理規約が公表されたことをお伝えしました。来年の総会では、改正区分所有法等の内容を踏まえた運営が求められることから、今後何回かにわたり、改正法等の内容のうち、直近の総会開催において注意すべき事項をご紹介します。
今回の改正では、総会招集時の通知事項等が見直されました。具体的には、①総会の招集通知記載事項の見直しと、②招集通知の発送時期の見直しとなります。これらの改正は、改正区分所有法において、総会の決議要件について出席者多数決が採用されたことが影響しているものと考えられます。
まず、①総会の招集通知記載の事項の見直しとなります。
従前は、総会の招集通知の記載事項として、会議の日時、場所及び目的の記載が求められていました。すなわち、会議の目的が規約の変更等、敷地及び共用部分の変更等、建替え等の場合等の重要な事項である場合に限って、議案の要領(区分所有者が賛否を判断することが可能な程度に議案を要約したもの)の記載が求められており、それ以外の事項については議案の要領の記載は求められておらず、議題を記載すれば足りるものとされていました。
これに対し、改正法等では、全ての議案について議案の要領を示すこととされたため、今後の総会招集通知についてはその議案の内容如何にかかわらず、全て議案の要領を記載することが求められます。なお、標準管理規約(単棟型)43条1項の記載は、改正前は「会議の日時、場所(WEB会議システム等を用いて会議を開催するときは、その開催方法)及び目的を示して」とされていたのに対し、改正後は「会議の日時、場所(WEB会議システム等を用いて会議を開催するときは、その開催方法)、目的及び議案の要領を示して」とされており、全ての議案において議案の要領を示すことが明記されています。
次に、②招集通知の発送時期の見直しとなります。
従前は、旧区分所有法35条本文において「集会の招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。」と規定され、同条ただし書において「ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。」と規定されていました。すなわち、旧区分所有法においては、総会の招集通知の発送時期について、1週間前に発しなければならないとされていたものの、規約でその期間を伸長し、又は短縮することが可能とされていました。
これに対し、改正区分所有法35条ただし書では「ただし、この期間は、規約で伸長することができる。」
とされており、規約でその期間を伸長することはできても、短縮することはできない(「伸縮」から「伸長」と変更されている)ことが明記されました。
なお、総会の招集通知の通知先との関係についても、所在等不明区分所有者の総会決議等からの除外手続制度が創設された(改正区分所有法38条の2、改正標準管理規約67条の3)ことに伴い、議決権を有しない者がその通知先から除かれています(改正区分所有法35条1項本文かっこ書き)。
(弁護士 豊田秀一)
【執筆者プロフィール】
豊田 秀一(とよだ しゅういち)
弁護士 マンション管理士 中小企業診断士
武蔵小杉あおば法律事務所(神奈川県弁護士会)所属
https://msk-aobalaw.com/
依頼者に「あんしん」をお届けすることをモットーに、一般民事、中小企業法務にかかわる案件を幅広く扱う。マンション管理士の資格取得後は管理組合の顧問業務にとどまらず、役員として管理組合業務に携わるなど、マンション管理に関する業務にも積極的に取り組んでいる。
