マンションと法(第五十八歩)
■改正区分所有法・改正マンション標準管理規約➁
今月も、改正標準管理規約の内容をご紹介します。
改正区分所有法38条の2において、所在等不明区分所有者の除外制度が創設されました。
いわゆる2つの老いを抱えるマンションが増加している現在において、区分所有者が不明であったり、区分所有者との連絡がつかなくなったりする所在等不明区分所有者(法律上は「区分所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」の当該区分所有者のことを「所在等不明区分所有者」と定義されています。)が増加しました。
そして、今回の改正標準管理規約においては、総会決議における多数決要件が見直され、一定の決議においては総会出席者による多数決に変更されました。この変更は、議決権行為に消極的な区分所有者の存在
によって、本来必要な意思決定ができないという実務上の問題を意識した見直しといえます。
しかし、マンション再生等に係る決議においては、区分所有者総数が基準とされています。この場合、所在等不明区分所有者は、当該総会に欠席することが予想され、議決権行使もしないことが通常であるため、当該決議との関係においては賛成者には参入されないことなり、結果的に反対者と同様に当該決議の成立を妨げることになります。そうすると、マンション管理への関心を低下させている所在等不明区分所有者が存在することにより、必要な総会決議が成立せず、必要な管理が行われないという弊害が生じることになります。
そこで、改正区分所有法において創設された所在等不明区分所有者の除外制度を利用することにより、上記弊害について対策を講じることが可能となり、改正標準管理規約においては、当該制度を管理組合として活用する際の手続規定が定められました。
具体的には、次のとおりです。
・ 理事長が、理事会決議を経た上で、所在等不明区分所有者の除外の裁判を請求することができること
・ 理事長以外の区分所有者が請求した場合には、遅滞なく、理事長にその旨を通知しなければならないこと
・ 所在等不明区分所有者の除外の裁判が確定したときは、それ以降に開く総会において、当該所在等不明区分所有者を除いて決議すること
・ 区分所有者の除外の裁判を請求する際に要した経費については、弁護士費用等を加算して、当該所在等不明区分所有者に請求することができること
なお、総会はマンションの最高意思決定機関であるところ、総会における議決権行使は区分所有者の
重要な権利といえます。そのため、ある区分所有者が所在等不明区分所有者に当たるからといって当然にその議決権がなくなるわけではなく、裁判所による除外決定が必要であるという点には注意が必要です。
(弁護士 豊田秀一)
【執筆者プロフィール】
豊田 秀一(とよだ しゅういち)
弁護士 マンション管理士 中小企業診断士
武蔵小杉あおば法律事務所(神奈川県弁護士会)所属
https://msk-aobalaw.com/
依頼者に「あんしん」をお届けすることをモットーに、一般民事、中小企業法務にかかわる案件を幅広く扱う。マンション管理士の資格取得後は管理組合の顧問業務にとどまらず、役員として管理組合業務に携わるなど、マンション管理に関する業務にも積極的に取り組んでいる。
