マンションと法(第五十九歩)

■改正区分所有法・改正マンション標準管理規約③

改正区分所有法では、国内管理人制度が創設されました(区分所有法6条の2)。

社会経済の国際化の進展に伴い、海外の投資家が日本国内のマンションを購入したり、区分所有者が日本人である場合についても、当該区分所有者が海外赴任のため一時的に海外で居住していたり、海外を生活の本拠としているというケースが増加しています。

管理組合は、マンションの良好な住環境を確保するため、各種管理業務を担っています。そして、マンションは多数の居住者が共同生活を送る場所であることから、管理組合が上記業務を滞りなく実施するためには、区分所有者と適時に連絡が付く状態を確保しておく必要があります。例えば、管理費等の支払が滞った場合や、必要箇所への立入が必要となった場合において、対象住戸の区分所有者と連絡が付かないときは、管理組合は法的手続をとらざるを得ないところ、このような対応では管理組合が適時適切な管理業務を行う上で支障が生じることになります。また、海外居住者を被告として法的手続をとる場合には、時間的にも費用的にも管理組合の負担がかかります。

このような状況に対処するために創設された制度が、冒頭に記載した国内管理人制度となります。

そして、国内管理人制度の具体的内容については、区分所有法6条の2に規定されています(末尾の条文の抜粋をご参照ください。)。なお、区分所有法の規定上、区分所有者は国外管理人を選任することが「できる」とされていますが、管理規約において、区分所有者に国外管理人の選任を義務付けることができると解されています。令和7年10月の改正標準管理規約(単棟型)コメント第31条の3関係の①においても、同趣旨の記載や選任を義務付ける場合の規約例が記載されています。また、同コメント②においては、国内管理人を選任した場合における届出書の様式が記載されています。

国内管理人は、区分所有法6条の2第2項各号に規定された権限を有していますので、上記の不都合性を解消して、円滑な管理組合業務の遂行に資する制度になるのではないかと考えます。

<区分所有法6条の2の抜粋>
(国内管理人)
第6条の2 区分所有者は、国内に住所又は居所(法人にあっては、本店又は主たる事務所。以下この項及び第三項において同じ。)を有せず、又は有しないこととなる場合には、その専有部分及び共用部分の管理に関する事務を行わせるため、国内に住所又は居所を有する者のうちから管理人を選任することができる。
2 前項の規定により選任された管理人(次項及び第四項において「国内管理人」という。)は、次に掲げる行為をする権限を有する。
一 保存行為
二 専有部分の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
三 集会の招集の通知の受領
四 集会における議決権の行使
五 共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して負う債務又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して負う債務の弁済
3 区分所有者は、第1項の規定により国内管理人を選任した場合において、管理者があるとき、又は管理組合法人が存立するときは、遅滞なく、管理者又は管理組合法人に対し、国内管理人を選任した旨並びに国内管理人の氏名又は名称及び住所又は居所を通知しなければならない。
4 区分所有者と国内管理人との関係は、第2項に定めるもののほか、委任に関する規定に従う。

(弁護士 豊田秀一)

【執筆者プロフィール】
豊田 秀一(とよだ しゅういち)
弁護士 マンション管理士 中小企業診断士
武蔵小杉あおば法律事務所(神奈川県弁護士会)所属
https://msk-aobalaw.com/
依頼者に「あんしん」をお届けすることをモットーに、一般民事、中小企業法務にかかわる案件を幅広く扱う。マンション管理士の資格取得後は管理組合の顧問業務にとどまらず、役員として管理組合業務に携わるなど、マンション管理に関する業務にも積極的に取り組んでいる。