マンションと法(第六十歩)

■改正区分所有法・改正マンション標準管理規約④

マンションは、多数の居住者が共同生活を営む場であることから、自らが生活を営む専有部分以外の箇所で発生した漏水等による影響が、自らの生活に影響を与えることがあります。

そのため、改正前の区分所有法6条2項前段においても、「区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。」と規定されており、区分所有者は一定の場合において他の区分所有者による使用や立入りを認めなければならない義務を負うものとされていました。なお、改正前の標準管理規約(単棟型)23条1項においても、共用部分に影響が生じている場合において、管理組合が専有部分等への立入りを請求することができる旨規定されていました。

しかし、当該各規定からは、区分所有者等が自ら実施する保存行為の請求が可能かどうかという点が明確ではありませんでした。

そのため、上階の住戸(専有部分)内から漏水が発生した場合において、その漏水の原因の調査等のために、上階の専有部分に立ち入ることが上記各規定により可能であるとしても、さらに進んで自ら保存行為を実施することまで請求することができるかについて明確ではありませんでした。

そこで、改正区分所有法6条2項前段では、「区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分若しくは自己の所有に属しない共用部分を使用し、又は自らこれらを保存することを請求することができる。」と定められました。この規定により、上階からの漏水事故が発生したような事案において、単に調査などのための立入りのみならず、漏水が発生している専有部分や専有部分内の設備等の不具合を補修するよう請求できることが明確になりました。なお、区分所有法の改正内容を踏まえて、改正標準管理規約においても、保存行為の実施請求が可能である旨が規定されています。

以上の改正内容を踏まえると、今後は、専有部分配管から漏水事故が発生した場合において、専有部分の保存行為実施請求をする場合の処理は、次のとおりとなります。まず、「専有部分のみに影響が生じているとき」は、改正区分所有法6条2項前段に基づき、影響を受けている専有部分の区分所有者が、漏水事故元の専有部分の保存行為の実施を請求することができます。これに対し、「共用部分に影響が生じているとき」は、改正標準管理規約23条1項に基づき、管理組合が、漏水発生元の専有部分の保存行為の実施を請求することができることになります。

(弁護士 豊田秀一)

 

【執筆者プロフィール】
豊田 秀一(とよだ しゅういち)
弁護士 マンション管理士 中小企業診断士
武蔵小杉あおば法律事務所(神奈川県弁護士会)所属
https://msk-aobalaw.com/
依頼者に「あんしん」をお届けすることをモットーに、一般民事、中小企業法務にかかわる案件を幅広く扱う。マンション管理士の資格取得後は管理組合の顧問業務にとどまらず、役員として管理組合業務に携わるなど、マンション管理に関する業務にも積極的に取り組んでいる。