管理組合の考察(第五十四歩)
■区分所有法の改正とマンション管理士
5月に区分所有法が改正された。施行は来年4月1日からである。
予定されていたこととはいえ、マンション管理業界はバタバタしている。私も国土交通省主催の説明会や、
マンション管理を専門とする大学教授などの有識者の講演会などに何度か参加した。
これから、関係法令が次々と改正される。まず標準管理規約の改訂がこの9月中に予定されている。その結果、各マンションの管理規約もこれらの諸法令に準拠した形で改正する方が望ましい。区分所有者法は強行法令であるから、同法違反の規約や細則は否定されるからである。
マンション管理士の私のもとにも規約改正に関する相談や、規約改正の原案作り、総会開催などの改正手続の依頼や相談が来ている。ある意味でマンション管理士界に神風が吹いてきた感じである。昨年の外部専門家活用ガイドラインの改訂につづくに2年続けての神風到来である。といっても神風自体の勢力も小さく、強さも弱いのであるが。
最新の法令に合致した管理規約の改正などを管理組合独自で行おうとするのは相当の困難が伴うだろ
う。改正項目が多岐にわたり、改正される法令も多い。
昨年の外部専門家の活用ガイドラインも管理会社による外部管理者方式を独立した1章を設けるなど多項目の変更を求められるものであった。
今度は区分所有法というマンションの根本法の改正であり、その影響は計り知れないものとおもわれる。これらの法令を理解し、個々のマンションの実情に合った管理規約を作り直すことは、関係法令に精通したマンション管理士でも困難な作業である。ましてマンションの専門家でない管理組合が独力で行うことは無理といっても過言ではないと考えている。
他方、この区分所有法の改正は、長年たまったマンションの諸問題を解決するチャンスともいえる。改正法の施行期限が定められ、この改正法に従った運営が強制されるので、それまでに個々のマンション管理の基本となる管理規約の改正も求められるからである。
つまり区分所有法改正という大義名分があるので、管理規約・細則の改正だけでなく、それに伴う予算措置なども区分所有者の理解が得られやすいからである。
次の管理組合定時総会では、管理規約の改正を議案にしてみてほしい。
この機会に外部管理者の導入や今後の管理組合の運営方法の変更を考えている管理組合関係者の方は、必ずマンション管理士などの専門家の助力を得てほしい。最新の法令に準拠しながら個々のマンションの事情に応じた解決策を提案できるはずだ。
身近にこのようなマンション管理士がいない場合は、地元のマンション管理士会や管理組合の団体に相談されることをお勧めする。また、私の所属する「管理組合を共同運営する会(https://kyoudou-unei.com/)」でもオンライン無料相談会を期間限定で開催しているので積極的に活用してほしい。
余談だが、この区分所有法の改正は、これからマンション管理士や管理業務主任者などの専門家を目指すものにとって多大の影響を及ぼす。これらの専門家になるためには国家試験を通らななければならないが、それらは試験日の同年4月1日に施行されている法令について行われる。つまり、今年不合格なら来年は全く異なる試験を受けねばならず、試験対策に有用な過去問検討もやりにくくなる。
今年の受験生は今年こそ絶対合格する気概で、受験勉強を頑張ってほしい。
資格試験の予備校の講師をしている友人のマンション管理士によると、上記の事情で今年の合格最低点も数点上がることが予想されているようだ。
(マンション管理士 渡邉元)