管理組合の考察(第五十八歩)

■標準管理規約の改定 その3

私は今回の区分所有法や標準管理規約の改正を踏まえて、各マンションの管理規約を改正するべきだと述べてきました。
それでは、どの点を考えて改正すべきでしょうか。今回は、区分所有法などの改正に伴って、各マンションの管理規約で改正した方が良い点をいくつか説明したいと思います。

1.総会の議決
区分所有法の改正前は、議決要件は絶対多数を基本としていました。つまり可決要件が過半数の普通決議は、総議決権数の過半数の賛成がなければ議決できませんでした。可否同数はもちろん、棄権票は積極的に賛成していないものでして、否決票として計算されていました。これは規約改正の決議のように3/4の賛成がなければ可決できない場合に大きな影響を与えました。積極的な賛成を得られず否決された場合が多数あり、組合運営に支障をきたしました。
今回の区分所有法の改正により、議決要件は出席者多数に変更されました。すなわち、議決はその会議に出席している者の多数で決議できるようになったのです。この場合の出席者とは、現実の出席者の他に議決権行使書を提出した書面投票者や委任状提出者も含みます。この結果、議事を始める前に、定足数(多くは議決権総数の過半数)に達しているかの確認が必要になりました。
また、所在不明の区分所有者を裁判所の許可を得て、決議の分母から除外する制度も新設されました。総会前にこの許可を得れば、その者は議決権総数から除かれます。その者には総会資料を送付しなくてもよくなります。もちろん、裁判所が所在不明と認定するのですから、単に連絡が取れないだけでは足りず、所在不明に関する何らかの証拠が必要になります。

2. 所在不明専有部分管理人
前項の場合は総会決議から除外されるだけですが、区分所有者が所在不明になったら、その専有部分の保存行為などの管理や管理費や修繕積立金の徴収に大きな影響をあたえます。
そこで、所在不明専有部分管理人の制度が認められました。
これは裁判所が、所在不明者に代わって専有部分の権限を行使できる管理人を選任する制度です。これは、専有部分の管理不全やマンション全体への悪影響を防ぐための制度です。専有部分が流通に供されないという社会経済上の不利益を防ぐためでもあります。
従って選任を申し立てれるのは、管理組合や専有部分の担保権者だけではなく、その専有部分を取得しようとする者も含まれます。
この管理人に選任されると、管理人が当該専有部分の管理処分権を専有します。専有するとは、後から区分所有者が現れても、裁判所から管理人を解任されるまで、その権限を行使できるということです。また、管理人は当該専有部分を裁判所の許可を得て売却もできます。

3. 国内管理人の選任
日本では外国人の不動産の所有は特別な法令がなければ、原則自由です。また、多数の日本人が海外に居住しています。これらの海外居住の区分所有者でも、区分所有者に変わりがありませんので取り扱いに差別をつけることはできません。管理組合は、総会の招集通知を海外の住所に送付したり、管理費や修繕積立金の回収をしなければなりません。
しかしながら、これらの海外居住者と連絡を取ろうとすれば大変な労苦が伴います。
そこで新区分所有法では、海外居住の区分所有者に国内管理人を選任することが可能な制度を新設したのです。
国内管理人は、当該専有部分の保存行為やリフォーム、賃貸なども行えます。また、総会の招集通知など区分所有者宛の文書の受領や総会での議決権行使もできます。管理費や修繕積立金の支払いなど管理組合との関係を良好に保つ行為も可能です。
気を付けなければならないのは、区分所有法は国内管理人の選任は区分所有者の権利としており、強制するには管理規約に定めなければならないことです。
この点は管理組合にとって重要であり、私が管理規約の改正を進める大きな理由の一つです。

区分所有法の改正趣旨を実現するためには、標準管理規約の改正に加えて、管理組合と管理会社の間を規律する標準管理業務委託契約の改正は必須です。
これについても年内の改正が予定されていたのですが、本稿執筆前に発表されませんでした。次月にはこれらの三点セットの解説ができることを期待しています。
(マンション管理士 渡邉元)

【執筆者プロフィール】
渡邊元(わたなべ はじめ)
MSAマンション管理士事務所 代表(メールアドレス:msahajime@gmail.com
明治大学法学部卒業後、米国法人総合金融会社・航空会社勤務をする。退職後、大手マンション管理会社に再就職し、マンション管理士等関連資格を取得し、独立開業する。
現在、「管理組合を共同運営する会」の事務局長として活躍中。
管理組合を共同運営する会ウェブサイト:https://kyoudou-unei.com/